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ソーラーカーポート
Dulight〈デュライト〉

  • Y.U
    商品企画課 課長

太陽光発電設置の
新しい手段

固定価格買取制度(FIT)の終了により、時代が自家消費へとシフトする中、当社は設置可能なあらゆる場所に太陽光発電設備を導入できるよう動き出しました。その中の1つがソーラーカーポートです。駐車場の上部空間を有効活用することで、駐車スペースはそのままに、太陽光発電の導入が可能となります。
ソーラーカーポートは大きく分けて2種類あります。1つは折板屋根(せっぱんやね)と呼ばれる金属製の屋根材の上に太陽電池モジュールを後から載せるタイプで、もう1つは太陽電池モジュール自体を屋根とする一体型タイプです。今回開発されたソーラーカーポート「Dulight(デュライト)」は、後者の屋根一体型タイプ。後乗せタイプは、土台となるカーポートの耐久性の面で課題が出ることもありますが、一体型タイプは、あらかじめ屋根となるモジュールを含めた強度設計ができるとともに、モジュールと架台部分との調和のとれた美しい見た目を表現することが可能となります。
Dulightは特にこの「意匠性」にこだわった商品です。商業施設や家庭用などエクステリアの一部として一般的なカーポートを検討されているお客様に対して、「発電機能がついているカーポート」という新しい選択肢としてご提案するためには、建物の景観を引き立たせるシンプルなデザインが求められます。見た目も美しく、その上発電ができるという付加価値に魅力を持っていただくことが重要でした。

両面発電太陽電池
モジュールの優位性

Dulightの意匠性において重大な役割を果たしているのが「両面発電太陽電池モジュール」です。両面発電太陽電池モジュールとは、字のごとく太陽の光が直接当たる表面からだけでなく、地面に反射した光や散乱光を裏面からも取り込んで発電ができるモジュールです。あらかじめ、このモジュールを屋根にすることを想定した設計であるため、スタイリッシュな見た目と高い発電性能を両立することができました。
「太陽電池モジュールは、設置面積の中でどのくらい発電させることができるかという点が開発目標となります。そのためにセル※の効率を上げること、モジュール内の損失を減らすこと、光の取り組む量を増やすことが方法として挙がります。」
※太陽電池を構成する最小単位。セルを組み合わせて1枚のパネルにしたものがモジュール。
両面発電太陽電池モジュールでは9本のマルチバスバーを採用しています。バスバーとは簡単に表現すると電気の通り道です。損失は、電気が流れる際に発生する熱によって生じることが多いため、バスバーの数を増やし一本当たりに流れる電流値を下げることで、熱によるロスを軽減させています。
また両面発電太陽電池モジュールでは、通常のセルを半分にカットしたハーフカットセルを採用しています。セルは面積を半分にしても電圧はそのままですが、電流は半分となります。電力は電圧×電流なので最終的にトータルすると同じ電力量になるのですが、セル1枚当たりの発生電流を減らすことで、モジュール内のインターコネクタの熱による損失を抑えることができ、結果的に発電効率を上げることができるのです。
さらに、最もわかりやすく効率を上げる方法は、取り込む光の量を増やすことです。両面発電太陽電池モジュールは、両面が特殊強化ガラスで構成されており、先述の通り表面からだけでなく、地面の反射光や散乱光を裏面から受けることによって効率よく光を取り込むことができます。
これらの技術は、太陽電池モジュールの効率を最大限に引き上げるためのものであり、そのすべてが集結したのが両面発電太陽電池モジュールなのです。長きに渡り太陽電池モジュールの販売・開発、そしてリユースに携わってきた当社の持つ、モジュールに関するあらゆる知識やデータがある当社だからこそ、スムーズな開発が可能となりました。

デモ機を通して
見えてきたもの

太陽電池モジュールに関する知見はあるとはいえ、ソーラーカーポートの開発は初めての当社。実際に体験をしていない分、行き詰まる場面もありました。そこで、駒ヶ根本社にてデモ機を設置し、目に見える形で検証を行うこととなりました。
▲ 駒ケ根本社に設置されたデモ機
検証を進めていたとある雨の日、Dulightのデモ機が雨漏りを起こしたのです。それはカーポートの設計が原因ではなく、モジュールの構造上やむを得ず起こるものでした。そこで急遽、これを防ぐための止水板の開発をスタート。屋根面への散水試験を実施し、天井からの雨漏りをしっかりと防げる構造に改良しました。
「条件がそろわない場合雨漏りは発生しなかったので、偶然とはいえ、製品をより良いものにするための良いきっかけとなりました。」
また、当社はこれまで平地への野立て施工は数多く手がけてきましたが、ソーラーカーポートの施工は未経験でした。野立ての場合、柱は完全にまっすぐでなくても問題はないのですが、カーポートの場合は建築物なのでそうはいきません。
「この点については、当社の工事部の方々にこれまでの知恵や経験を出し合って最もコストバランスが良く、作業者の技量に依存せず簡単に設置できる方法を検討して頂きました。“高い意匠性”というのは、綺麗に施工出来た後の結果です。どれだけ開発段階で気にしても、実際に設置した状態が一律で同様でなければならないのです。」
どれだけ未経験のものでも、これまでの開発、施工経験の延長線上で解釈し、形にしていく力は当社の強みといえます。

より良い製品を
目指して

Dulightの販売開始から約9か月経った現在、意匠性はそのままに、99cmの積雪にまで対応した改良版の販売をスタートさせました。これにより、積雪地域でもソーラーカーポートの導入を検討いただくことが可能になります。
また今後は、柱間のピッチを広げた製品を検討してしていく予定です。近年、自動車が大型化してきており、間口を広げることは利用者にとっても非常に有益な改良になります。加えて、DR認定(飛び火認定)の取得も大きなテーマの1つです。現在、準防火地域や防火地域(駅の周辺など建物の密集度が高く、火災による被害を受けやすい場所)への設置については案件ごとに建築確認をしながら承認を行っている状態ですが、DR認定を取得することによりその作業が不要となり、カーポートの導入のハードルを下げることができます。年内には試験を実施し、取得できるように現在準備をしているところです。
市場の動向や利用者のことを常に考え改良を続けていくことで、ソーラーカーポートの導入スピード、ひいては再生可能エネルギーの普及をさらに加速させることができると考えています。